いちじくは「肥料をあまり必要としない果樹」と言われます。
実際、最低限の施肥でも育ち、実も付きます。
ただし──
収穫量を安定させたい、実を大きくしたい、味わいを良くしたい
そう考え始めると、肥料の考え方が一段階変わってきます。
この記事では、そういった方に向けて、
- いちじくの基本的な肥料の考え方
- 成長スピードに合わせた施肥タイミング
- さらに一歩踏み込んだ「肥料の種類の調整」
までを、段階的に解説します。

基本の考え方:いちじくの肥料は「多すぎない」
まず大前提として。
いちじくは
肥料過多になると枝葉ばかり茂り、実付きが悪くなる
という性質があります。
そのため、
- 野菜感覚で頻繁に追肥する
- 窒素分の強い肥料を多用する
こうした管理は、かえって逆効果になりやすい果樹です。

基本方針
- 肥料は「少なめ・効かせすぎない」
- 年間の施肥回数は3回を基本とする
- 成長段階を見ながら調整する
成長段階別:いちじくの基本的な肥料設計
① 植え付け〜活着期(春)
目的:根を張らせ、樹を安定させる
- 元肥:緩効性肥料(控えめ)
- 有機質が多い土なら無理に入れなくてもOK
この時期は、
「肥料で育てる」のではなく
根が自力で土に慣れることを優先します。
▶ ポイント
- 窒素過多にしない
- 肥料よりも水管理が重要
② 新梢が伸びる時期(5〜6月)
目的:枝を健全に伸ばす
ここが、いちじくの成長スピードが一気に上がる時期です。
- 基本肥料:緩効性の化成肥料 or 有機肥料
- 成分比:N(窒素)控えめ〜中程度
枝が弱々しい場合のみ、軽い追肥を行います。
▶ 注意
枝が勢いよく伸びすぎる場合は、追肥は不要です。
③ 着果期〜肥大期(8〜9月)

目的:実を太らせ、落果を防ぐ
ここからが「調整の余地が出てくる段階」です。
基本管理では、
この時期も 同じ肥料を少量 で十分です。
ただし、
- 実が小さい
- 数が安定しない
- 樹勢は強いが味が薄い
こうした場合、肥料の質を少し変えていきます。
肥料調整:収穫量・味を伸ばしたい場合

窒素を抑え、リン酸・カリを意識する
実の収穫量を重視する場合は、
- 窒素(N)を抑える
- リン酸(P)とカリ(K)を意識する
これが基本です。
化成肥料を使う場合
- 花・実向け肥料を少量使う
- 果樹用肥料を「規定量より少なめ」に
有機質肥料を使う場合
有機肥料は効きが穏やかで、味に影響しやすい傾向があります。
特に向いているのは、
- 油かす(少量)
- 骨粉(リン酸補給)
- 草木灰(カリ補給)
▶ 使い方のコツ
- 1回で効かせない
- 土に混ぜ込み、時間をかけて効かせる
味を重視したい場合の考え方
「甘さがのらない」と感じる場合、
- 肥料のやりすぎ
- 水分過多
- 窒素過多
この3つが原因のことが多いです。
肥料で甘くする、というより
余計なものを与えすぎないことが重要になります。
少し厳しく育てていきましょう。
鉢植えと地植えでの肥料の違い
鉢植え
- 肥料が効きやすい
- 少量・回数分けが基本
- 即効性肥料は慎重に
地植え
- 土の力を活かせる
- 有機質中心でもOK
- 年1〜2回の施肥でも十分
いちじくの肥料管理まとめ
- 基本は「同じ肥料を少なめに」
- 成長段階で量を調整する
- 収穫量・味を狙うなら質を調整する
- 与えすぎないことが最大のコツ
いちじくは、
肥料で作り込む果樹というより、引き算で仕上げる果樹です。
まずはシンプルに育て、
物足りなさを感じたら、少しずつ調整していく。
その過程も含めて、いちじく栽培の楽しさだと思います。


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